件数としての参加は28でした。家族皆さんで聴講した方もいますので、40 ~ 60名が聴講されたと思います。はじめに新しい血糖測定器の紹介がありました。最近いろいろな血糖測定器の選択肢が増えていますが、最新のものがすべての人に対して最適というわけではなく、その人が気に入ったものを選べばよいとアドバイスされました。
また元来2型糖尿病患者向けに開発されたSGLT2阻害薬が、最近、1型のコントロールの改善にも効果があることが分かったとお話しされました。この薬の作用は尿にブドウ糖を排出するもので、特に血糖値が高い時に排出されるため効果があるのだそうです。また弱りかけた膵臓ベータ細胞の回復にも有効性が確認されていて、日本では1型糖尿病にも適用承認が済んでいるものです。また、この薬は血糖安定だけでなく体重増加防止に有効なものとのことです。しかし、尿に栄養分が下りることから細菌に感染しやすくなって、膀胱炎などを起こしてしまう副作用が、世界規模の統計上では多いのですが、日本では習慣として風呂に毎日入り、清潔を保っているのでそのデータと比べて値は小さいみたいです。
SGLT2阻害薬の効果は1型の場合、2型患者の場合より小さいのですが、HbA1C(ヘモグロビンA1C)を0.3 %程度下げる効果が見られるとのことです。もちろん最も重要なのは、正しいインスリン治療と食事ということに変わりはないとあらためて言われました。血糖管理が甘めの人ほどHbA1cの改善効果があるのですが、管理が良好な人は必要のないものです。
しかしSGLT2阻害薬を飲んでいるとケトン体ができやすくなるため、胃腸風邪などがきっかけとなってケトアシドーシスを血糖値がそれほど高くなくても起こした例があり、飲んでいる人はシックデイで食事が摂れないときはこの薬を飲まないようにしなければなりません。先生は、1型糖尿病患者にとって重要なことは、「正しい基礎インスリン」、「正しい追加インスリン」、「健康な食事」、「シックデイの適切な対応」であると強調されていました。
CGM(持続グルコースモニタリング)の最近の進化についてもお話しされました。血糖値が低下し過ぎることを予測して自動で注入を停止する機能だけでなく、再開の自動で行う機能が最近の物には付いていて、リモコンでポンプ操作が可能なものもあることを紹介されました。次のタイプは増量機能も備えているそうですが、海外の例では自分でコントロールしたいため従来のタイプに戻す人もいるのだそうです。
ポンプでなく注射の方が生活に合っている人もたくさんいます。超即効インスリンを打つタイミングを食事の直前と誤解している人が多いため、注意を促されました。注射を打つ正しいタイミングは、食事の15分前で、食事の直前に打つのはやむを得ない場合と考えましょうと言われました。
最近出た新しいインスリンもお話しされました。超速効型インスリンのフィアスプとルムジェブが、それぞれ今年の2月と6月から使えるようになっています。毛細血管への吸収を促進するので早く血液に行きわたるようになっていて、食事開始前2分以内、食事開始から20分以内が指定されています。食前、食中に注射できるので患者にとってより使いやすいものです。
重症低血糖の時に使われるグルカゴンの新しい薬が間もなく出るそうです。室温で保存する経鼻グルカゴン(バクスミー)が9月中旬ごろから利用できる予定です。今までのものは冷蔵庫に保存していて使い方も難しかったのですが、これは屋外への持ち出しもできますので安心感が高まります。
最後にコロナ感染症についてもお話しされ、1型糖尿病患者は感染すればハイリスクになるのですが、40歳台ぐらいまでは健常者と比べてほとんど変わらないらしく、感染率は健常者と変わらないので、ソーシャルディスタンスをしっかり取って、予防の基本を守ることが大切とお話しされました。世界規模の統計データでは、健常者と比べて重症になる割合は、全年齢で見ると1型患者は2.8倍、2型は1.8倍とのデータがあるのですが、日本では医療水準が高いのでこのデータよりも低くなるだろうとのことでした。
講演後、参加者から暁現象や夜中の高血糖に対する対応方法、また血糖値の変化から低血糖になっていることをどう判断するかなどについて7、8件の質問が出て、先生から注射方法や適切な補食についてご助言をいただきました。
今回、はじめてのビデオウェビナーで勉強会を実施しました。先生には大変わかりやすく講演していただき、質問も活発で充実した勉強会になったことは、講師の木村先生のおかげです。先生に心より御礼申し上げます。(会長)